30代薬剤師mint-tomatoの体験記

お薬と健康情報・薬剤師のお仕事紹介

結局、保湿クリームは保険適応されるのか?

こんにちは、薬局薬剤師のミントトマトです。

 

数日前、患者さんにこんな質問をされました。

 

「保湿クリームは保険で買えなくなると聞きました。今はまだ大丈夫なんですか?」

 

この患者さんは若い女性で、出産後の産婦人科の定期受診で他のお薬と一緒に、保湿効果の高いヘパリン類似物質油性クリームが処方されていました。

 

近年、処方せん医薬品の保湿クリームが美容目的で使われていることが問題視されてきています。ヘパリン類似物質配合の保湿剤は、2019年12月現在も保険適応で処方されています。

 

少し専門的な文言になりますが、処方せん医薬品は保険が適応されるために診断名や用途が決まっています。ヘパリン類似物質配合の保湿剤は、保湿効果の他に、皮膚の血行促進作用があり、下記の効果効能があります。

 

血栓性静脈炎(痔核を含む)、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結並びに疼痛)、凍瘡、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防、進行性指掌角皮症、皮脂欠乏症、外傷(打撲、捻挫、挫傷)後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎、筋性斜頸(乳児期)

 

難しいので簡単にまとめると、、、

血行が悪く痛みや赤く炎症を起こしている場合や、しもやけ、火傷や手術の傷跡などで皮膚が赤く盛り上がっている状態(ケロイド)、ひどい乾燥、ねんざや打撲後などの腫れや筋肉痛、関節炎などに効果があるということです。

 

ドクターの判断でこれらに該当する場合は処方してもらえ、保険で買うことができます。ただ、優しいドクターなら、患者さんから乾燥肌なのでヘパリン類似物質入りのクリームを出してほしいと相談されると、皮膚科専門でなくても出してくれてしまうのが現状かなと思います。

 

アトピーの方などのひどい乾燥肌の方にも使われる医薬品ですから、低刺激な上、保湿効は抜群です。市販のヘパリン類似物質入りのクリームを買ったことがある方は知っていると思いますが、これ、結構高いんです。市販の商品なら50〜60g入りで2,000円〜3,000円します。処方せん医薬品も同様に元の値段は結構高いです。保険で買うと1割〜3割負担で済むので、ヘタな高い化粧品を買うより安く買えてしまうわけですね。そんな情報が回って、ドクターに頼んで出してもらう患者さんが増えているのかなと思います。

ただ、この状況が続いてしまうと、規制されてしまう可能性があります。医療費の7〜9割は健康保険が支払ってくれているわけですが、ただでさえ、医療費は高齢化で年々膨らんでいて支払われている保険料では採算が取れておらず破綻寸前と言われている今、そんな美容目的の無駄使いを見逃すわけにはいきません。

ただ、本来必要としているアトピー治療などの皮膚科の患者さんや、抗がん剤の皮膚への副作用対策として使っている患者さんのために規制を反対するドクターも多く、とりあえず今のところは厚労省は「規制はしないと」しています。

 

市販の商品には、ヘパリン類似物質配合クリームの他に、ワセリンなどの安価でも低刺激なもの、その他ハンドクリームでもかなり改良された商品が出てきています。皮膚科で診てもらう必要性がなければ、自分に合った保湿剤は市販の商品から探すのが基本ですよね。

 

今は規制されていないヘパリン類似物質配合の保湿剤ですが、今後どうなるかはわかりません。湿布薬は、現在既に規制が始まっており、一度にたくさん処方することができなくなっています。医療費削減の流れがある中、今後はこのような規制が増えていくのかもしれません。