30代薬剤師mint-tomatoの体験記

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ビタミン剤の選び方 後編

こんにちは、元ドラッグストア薬剤師のミントトマトです。前回に引き続き、市販のビタミン剤についてご紹介します。
 
 1.ビタミン剤の分類
5.ビタミンB6
9.ビオチン
10.ビタミンC
11.ビタミンA
13.ビタミンE
14.ビタミンK  
 
 
妊婦さんにおすすめのビタミンとして知られている葉酸。実は、葉酸もビタミンB群に属します。
妊娠を希望している・妊娠している女性は、胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低減するために、一日240㎍の追加摂取が推奨されています。
葉酸は、赤血球を作るために必要なビタミンです。ビタミンB12も同様に赤血球を作るために必要なので、貧血が気になる方は鉄分と共に、葉酸ビタミンB12もセットで積極的に取りましょう。そのは他に葉酸細胞分裂や細胞の再生に関わり、体の発育にも必要なビタミンです。
通常、葉酸が欠乏すると、ビタミンB12欠乏と同様の貧血を引き起こします。胎児や成長期の子どもの成長にも必要なので、妊婦さんや成長期のお子さんは積極的に摂る必要があります。
 
 
 
パントテン酸もビタミンB群に入ります。様々な食品に含まれており、通常は不足することはありません。
しかし、体の中の様々な所で必要となるビタミンです。もし不足してしまうと、疲れやすくなったり、食欲がなくなったり、便秘になったりといった症状が見られます。
なので、疲れが気になる方におすすめされる商品やビタミンB群の一つとして一緒に配合されていることが多いです。  
 
 
 
 9.ビオチン
ビオチンもビタミンB群に入ります。エネルギーをつくりだす手助けをする他、皮膚や粘膜の維持、爪や髪の健康に深く関わっているビタミンです。
不足するとアトピー性皮膚炎や脱毛などの皮膚症状や食欲不振、うつなどの症状が現れます。サプリメントでは皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素と記載されています。
ビオチンは、様々な食品に含まれ、腸内細菌によっても作られます。なので、滅多に不足することはありません。
卵白の成分がビオチンの吸収を妨げるのですが、これは生卵だけで、加熱した卵なら問題ありません。生卵を毎日食べる人は、ビオチンの不足が心配されます。  
 
 
10.ビタミンC
ビタミンCは皮膚のメラニン色素の生成を抑え、日焼けを防ぐ作用や、ストレスやかぜなどの病気に対する抵抗力を強める働きがあります。血管・歯・軟骨などを正常に保つ働きや、その他にもビタミンCがもつ抗酸化作用から色々な効果が期待されています。
ビタミンCはアスコルビン酸と表記されていることがあります。
ビタミンCが不足すると、皮下出血、骨形成不全、貧血になる可能性があります。
市販薬やサプリメント以外に化粧品にもよく含まれていて、美白のためによくおすすめされるビタミンです。
ただし、ビタミンC自体はそのまま塗っても肌から吸収されにくいので、ビタミンC誘導体という形にして肌から吸収されやすく工夫されていることがあります。  
 
 
 
ここからは、脂溶性ビタミンについてお話しします。 
 
11.ビタミンA
ビタミンAは、レチノール、レチナール、レチノイン酸の総称です。植物に含まれるβ(ベータ)-カロテンは、小腸でビタミンAに変換されるのでプロビタミンAとも呼ばれています。β-カロテンのすべてがビタミンAに変換され吸収されるわけではなく、効力はβ-カロテンはレチノールの6分の1に相当すると見積もられます。
ビタミンAの主要な成分であるレチノールには、目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強めたりする働きがあります。また、レチノールは薄暗いところで視力を保つ働きもあります。このため、市販の目薬にも配合されていることがあります。
ビタミンAが不足すると薄暗いところでものが見にくくなり、やがて夜盲症になります。また、目の角膜や結膜が乾燥するほか、皮膚や粘膜も、乾燥し、硬くなります。子どもの場合は成長が停止する場合もあります。
反対に脂溶性ビタミンである、ビタミンAは過剰に摂取しても、健康障害が起こることが知られています。ビタミンA過剰症の症状として、頭痛が特徴的であるほか、皮膚のはげ落ち、口唇炎、脱毛症、食欲不振、筋肉痛などの症状が見られることが知られています。
ビタミンAの過剰症は通常の食事ではほとんど起こりませんが、サプリメントを利用したり、ビタミンAを特に多く含むレバーを過剰に食べたりする際は注意が必要です。ちなみに、植物に含まれるβ-カロテンからのビタミン A への変換は必要に応じて調節されているため、β-カロテンによるビタミン A の過剰症は起こらないとされています。  
 
 
 
ビタミンDにはD2からD7の6種類ありますが、人に大きく影響をしているのはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)とビタミンD3(コレカルシフェロール)です。この2つはほぼ同等な効果を持ちます。また、ビタミンD3は人の皮膚が紫外線に当たることで補うことができます。健常人が日本で適度な日光のもとで通常の生活をしている場合、ビタミンDが不足することは少ないと考えられます。1日中屋内で過ごすような方は食事からビタミンDを摂取する必要があります。
ビタミンDの生理作用の主なものに、正常な骨格と歯の発育促進が挙げられます。
ビタミンDが欠乏すると食事からのカルシウム吸収が悪くなり、さらに、血液中のカルシウムもおしっこからどんどん出ていってしまうようになります。そのため、骨の軟化がおこり、成人、特に妊婦や授乳婦では骨軟化症になります。また、こどもの場合は骨の成長障害が起こり、姿勢が悪くなったり、足の骨が曲がったりします。高齢者の場合は、骨粗鬆症になりやすくなり、骨折しやすくなります。
ビタミンDは、脂溶性ビタミンのため過剰摂取による健康障害が知られています。ビタミンDをとりすぎると、欠乏の時と逆のことが起こり、カルシウムが過剰になります。そのため腎機能障害や食欲不振、嘔吐、神経の興奮性の亢進などの症状が現れます。  
 
 
 
13.ビタミンE
ビタミンEは4種のトコフェロールと 4種のトコトリエノールの合計8種類の化合物の総称です。
ビタミンEには強い抗酸化性作用があり、血管を健康に保つほか、血中の悪玉コレステロールの酸化を抑制したり、赤血球の破壊を防いだりする作用もあることが知られています。また、細胞の酸化を防ぐため、老化防止にも効果があります。
ビタミンEが不足すると、神経や筋障害の症状がみられることがあります。そのため、血行も悪くなり、冷え性や頭痛、肩こりなどを起こしやすくなります。また、抗酸化力が低下するため、肌を紫外線などの刺激から守りにくくなり、シミやシワができやすくなります。また、血液中のコレステロールも酸化しやすくなるため、これが血管壁に入り込んで溜まり動脈硬化の原因につながります。
ビタミンEの市販薬だと手足の冷え・しもやけ・肩こりなどを効果効能としています。サプリメントでは、いつまでも若々しく健康でいたい方におすすめ、などと記載されています。
過剰症としては、血液が止まりにくくなることが知られていますが、実際には、摂取量の3分の2が便として排出されるため、脂溶性ビタミンの中では比較的体内に蓄積されにくく、通常の食事の範囲では過剰症はほとんど起こりません。ただし、サプリメントや市販薬で摂る場合は記載された目安量・用法用量を守りましょう。
 
 
 
 14.ビタミンK
ビタミンKの主要な作用は、血液凝固に関与するものです。ビタミンKが欠乏すると血液凝固に時間がかかり、出血が止まりにくくなります。ビタミンKは丈夫な骨づくりにも不可欠で、骨の形成を促す作用があります。
ちなみに、薬剤師の業界では有名な話ですが、ワーファリンという血液サラサラのお薬を飲んでいる方は、このビタミンKを多く含む納豆やクロレラ、青汁を摂るとワーファリンの効果が打ち消されてしまうので、これらの食材は禁止されています。サプリメント・市販薬も、ビタミンKが入っているものは摂らないようにしてください。カルシウムなどを主成分とした商品でも、骨の形成に必要な成分として一緒に入っていることがあります。
ビタミンKはさまざまな食品中に広く含まれますし、ビタミンK2は腸内細菌によっても合成されるので、健常人が不足することはあまりありません。新生児では腸内細菌からのビタミンK2供給が少ないため、ビタミンKが不足することがあります。高齢者もビタミンKが不足しやすくなります。それは、加齢により膵液や胆汁の分泌量が低下すると、ビタミンKの吸収量が減少するからです。
ビタミンKは多量に摂取しても健康被害が見られないことから、食事摂取基準にも上限量は設定されていません。ただし、サプリメントで摂る場合はくれぐれも記載された目安量を守るようにしてください。 
 
 
 
2回にわたり、各ビタミンについてご紹介してきました。いかがでしたか?
ビタミン不足は様々な不調をきたす可能性があります。食事で摂ることが難しい方は参考にしてくださいね!
市販薬・サプリメントどちらに関しても、商品ごとに配合量が違います。記載された成分は、配合量の多い順に並んでいます。また、サプリメントなら1日に必要な量の何%が摂れるのか書いてあることもあります。小さい文字で書かれていることが多いのですが、頑張って目を通してくださいね。
マルチビタミンなどのたくさんの成分が入っている商品については、バランスよく不足しがちな成分が入っていますが、過剰摂取防止のため、少なめに配合されているビタミンもあるので、目的に応じて選んでください。
 
何度も言いますが、くれぐれも過剰摂取には注意が必要です。記載された量を守って正しく服用しましょう。また、2種類以上の商品を組み合わせる場合は、成分が重なって過剰摂取にならないよう注意が必要です。もし成分が重なっている場合は、計算が難しいと思うので、可能であれば購入前に、店頭の薬剤師や登録販売者に相談しておくと安心ですね。