30代薬剤師mint-tomatoの体験記

お薬と健康情報・薬剤師のお仕事紹介

ドラッグストアで働く薬剤師の本音2

私が2年前まで勤めていたドラッグストアでのお話、続編です。

1.薬局業界について 2.ドラッグストアでの薬剤師のお仕事について 3.私が実際に働いていた勤務体系 4.ドラッグストアの仕事の魅力 5.実際に働いて感じていたこと

 

前回、長時間少人数シフトでなかなか体力的に大変な仕事だというところまでお話ししました。今回は、それでもドラッグストアを選んだ訳をお話しします。

 

4.ドラッグストアの仕事の魅力 

ドラッグストア内での仕事の魅力の1番は、処方箋のお薬以外の市販薬や健康食品、サプリメントの相談、販売です。

医師が書いた処方箋を基に薬を用意するのではなく、薬剤師が自分でお客様に合った商品を提案することができるので、やりがいがあります。お客様の健康に影響することなので、会社のイチオシだからと無理な売り付けをすることができない分、よりお客様のためを思って選ぶことができます。

数が多く、新しい商品もどんどん出てくるので、そのたびに勉強が必要ですが、お客様の質問に的確に答えられたり、自分が提案した商品を納得して購入してもらえると嬉しいものです。また、新卒入社の場合は研修期間が長めなので、その間に様々な市販薬、健康食品、サプリメントについての研修を受けることができます。研修で接客相談のロールプレイも行いますし、店舗配属後もしばらくは研修生として接客するための時間をとってもらえて、実際の商品に触れながら、知識と接客技術を身に着けていきます。1年も経てば、「こういう症状ならこの薬!」「この手の薬はいっぱいあるけど成分的にこれが一番!」という商品の選び方のコツが身につきます。あとは、実際にお客様の相談に乗りながら、最近の流行りの健康食品やサプリメントについて都度調べたり、メーカーからの案内に目を通したりして幅広い商品の知識が身に付いていきます。

病院で医者に「この健康食品を飲んでいるけど大丈夫かな?」と聞いても、医者は専門外の、しかも処方箋の薬以外の知識はそんなにないので、なんとなく「やめておいて」とか、なんとなく「大丈夫」としか答えられないケースも多いです。健康食品でも薬に大きく影響する物(セントジョーンズワートなど)があります。しかし、それはごく一部の商品ですので、ドラッグストアの薬剤師ならもっときちんと相談にのれる可能性があります。

市販薬も、風邪薬といっても持病があると飲めないもの、持病があっても飲めるもの、など色々あります。また、処方箋の薬では使われていない成分が入っていることも多いので、調剤専門薬局で薬剤師に「パブロンS飲んでます」と言うと、慌てて調べだして結構待たされる、みたいなこともあるかもしれません。処方箋のお薬でPL顆粒というよく使われる風邪薬がありますが、これは前立せん肥大(大人の男性が尿が出にくくなってくるあれ)がある場合、程度によっては飲んではいけない場合があります。ですが、市販薬の中にはそういう人でも飲める、漢方以外の風邪薬があるんです。(店によっては売ってない場合もありますが)

ドラッグストア内の調剤室に処方箋を持ってきたお客様なら、持病や飲んでいる薬も知っているので、お薬の説明の時に、ついでにその人に合った市販薬やサプリメント、健康食品を選ぶことができます。また、商品を選ぶだけでなく、市販薬で対応するべきなのか、それとも病院で診てもらった方が良いのかの判断も薬剤師が行えます。責任重大ですが、やりがいがあります。時々いるんです、すごく重たい症状で、明らかにただの風邪ではないのに、良い風邪薬ありますか?と聞いてくるお客様が。

 

あと、余談にはなりますが、私が勤めた会社は社割があったので、店内の商品のほとんどを1割引きで買えたので、個人的にはそこも魅力かなと思います。化粧品もある程度割引で買うことができました。会社によっては社割がないところもあるようですが。

 

ここまで色々魅力についてここまで話してきましたが、、、

結局のところ、私が最初の就職先にドラッグストアを選んだ理由は、自分で薬を選んで提案できる魅力と、最初に働くなら、まずは幅広い知識を身に着けておきたいということです。研修は中途採用ではそんなに時間をかけてもらえませんし、そもそも最初に調剤専門薬局に入ったら、そのあとドラッグストアで勤務するのは業務内容が違いすぎてハードルが高いと思ったんです。

 

 

5.実際に働いて感じていたこと

働いていると、良い面も悪い面も見えてきます。

まず、病院のすぐ隣の薬局ではないことによるデメリットがあります。 色んな医療機関の処方箋を受け付けると、風邪薬一つでも、いろいろな処方の仕方があります。すぐ近くの医療機関でよく出る薬は頑張って在庫するようにしますが、在庫していない薬が出ることも少なくないので、その場合の対応がなかなか大変です。また、不良在庫も増えるので、在庫の管理も大変です。また、「この病院でよく出るお決まりの処方」がわからないことで、処方が間違っているのか、あえてこの出し方なのか、判断に困ることも多いです。さらに、診察が終わった時間であることも少なくないので、病院に電話で聞きたくても聞けない、その場でお薬を渡すことができない、なんてこともあります。

 

また、苦労したことでいえば、調剤室内での日々の連絡事項に加え、売り場の商品や店の事情で知っておかないといけないことが沢山あり、私の頭では常にフル稼働しないと頭に入らないような状態でした。

業務も夕方以降は他の薬剤師や調剤室の事務さんも帰ってしまって、患者さんが来てもすべて一人で対応しないといけない時間があり、しかも在庫がない薬が出ていたり、理解に苦しむ処方内容だったりすると冷や汗が出ました。一応レセコンの入力は店の従業員がある程度研修を受けているので手伝ってくれるのですが。

 

あとは、長く勤めるほど、土日や長期の休みが取り辛いということが負担になっていきました。友人に旅行や土日に会おうと誘われてもなかなか行けません。週休2日で、通常3~4日に1回休日が来るのですが、長時間の勤務ですので、忙しい時期だとただただ体力回復に努めるような時間の使い方しかできませんでした。運動もあまりしないので、だんだん体力が落ちただけかもしれませんが。また、歓送迎会などのお店の飲み会は営業時間後になるので、かなり遅い時間になりますし、次の日の勤務はみんなぐったりしています。それもあって、あまり頻繁に飲み会はできないです。

そう考えると、私生活はかなり寂しい感じになっていましたね。

今の主人とは学生の頃から付き合っていたので、向こうは土日休みでしたし、月に1回は土日に休みをもらってなんとか会っていました。 また、店舗によっては積極的に連休を交代でとるようにしていて、旅行に頻繁に行っている同期もいたので、お店の状況によって違うのかもしれません。

 

それから、良くも悪くも人が少ないので、管理薬剤師(薬局の責任者)に早ければ3~4年でなれます。出世したい人にとっては好都合ですね。また、若い薬剤師が多いので、ジェネレーションギャップや考え方の違いは少ないのかもしれません。全国区ではなかったのですが、その地域にはたくさん店舗を出していたので、異動も多く他店の情報も入ってきて、職場がすごく狭い人間関係だけっていうわけでもありませんでした。

私は管理薬剤師にはなれませんでしたが、多少お手伝いとして在庫の管理や、レセプト請求(お薬代の保険請求)を任されていました。面倒な仕事と言ったらそれまでですが、この辺はやっておくと薬の知識が増えたり、薬歴(患者様の記録)を書くのに生かせることがあり、良い経験になりました。

 

 

最後に

そんなわけで、5年勤めて寿退職となってしまいましたが、もし新居が県内だったらきっとそのまま働いていたと思います。主婦業もあるので体力のある限りですが。多少不満はありながらも、次に活かせるいい経験ができたなーと感じています。